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予測をそこそこ裏切る展開とフリーダム過ぎる倫理観。お国柄の差を感じる怪談-『中国怪談』

『中国怪談』

話梅子/2009年/239ページ

山奥の庵に、ずいぶん前に死んだ友人が訪ねてきた。その晩、麓の村では、葬式前の遺体が消える事件が起きて…。今夜死ぬ、という占いが出た男。家族の寝ずの番も空しく命を落としたが、その死には意外な真相が…。本来の寿命より前に殺された女。肉体のすでに朽ちた女を、現世に戻す秘策とは?童子の耳の中に不思議な国が広がり、金色の鰻が7人もの命を奪う。中国の長い歴史が育んだ、奇妙な味わいの傑作怪談集。

(「BOOK」データベースより)

 

 有名な『聊斎志異』を始め、さまざまな怪異小説を基にした中国古典怪談アンソロジー。基本的に中国の幽鬼という存在、ほとんど現世の人間と変わらず普通に人の世で生活できるようで、日本の幽霊のようにスッと姿を消したりはしないし、祟りや呪いも物理攻撃がそれなりに多い印象である。

 「孫押子」は暗号の謎解きもあるミステリで、見事などんでん返しと真犯人暴きが楽しめる。これが明時代の話と言うから驚く。「業鏡」は登場人物全員悪人、詐欺師と詐欺師に騙された詐欺師がお上に訴えるも、全員もれなく罰を受けて生きたり死んだりするというスカッと話。「金の鰻」は、池の主である鰻を食べてしまったがために7人もの命が奪われる…という話だが、読み終えてみると鰻は特に関係なかったりする。しかしまあ中国でも日本でも、異性にだらしない人間というのは手ひどい罰を受けるようになっているのだなあ。

★★★(3.0)

 

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