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ホラー小説で究極の美味、つったらアレを食べる話に決まってるじゃないですか-『究極の美味』

『究極の美味』

雁屋哲/1995年/234ページ

美食評論家斉田は自分が中国の皇帝として君臨する夢を度々みる。が、いつもそれは忠義の大臣が命懸けで用意した料理が運ばれ、食べる寸前でさめてしまう。そんなある日、斉田は晩餐会の席で、世界の超有名シェフの誰もがひれ伏す、悪魔的な魅力をもった中国人易牙と知り合い魅かれていく。彼の導きで斉田は「究極の美味」に近づく喜びに酔いしれているが、それは2700年の時空を超えた復讐の罠に落ちることであった―。

(「BOOK」データベースより)

 

 単行本『二千七百年の美味』を改題・文庫化したもの。主人公の追い求める究極の美味とは果たして何なのか? というテイで進んでいくのだが、ホラー小説で「究極の美味」っつったら、まあアレを食べる話になるんでしょうなあ…と大方予想はついてしまう。なんせ、序盤から「猿の脳味噌」を食う話が出るし(口絵もご丁寧に猿の脳味噌である)、蛙の脇腹だのセンザンコウの鱗だの、『美味しんぼ』のアニメ版なら封印間違いなしの料理ばかり出てくるのである。

 ラストには実際アレを食べるっちゃあ食べるんですけど、意地の悪い一捻りが入っているので読んで損した気にはならないはず。あと主人公が鼻持ちならない美食評論家なので後味は悪くない。原作者ならではのグルメうんちくも楽しめるし、期待に応えてくれる1作という感じ。東雅夫による解説は萩原正太郎の「死なない蛸」、谷崎潤一郎「美食倶楽部」といったグルメホラーを取り上げており、こちらも読み応えアリ。

★★★(3.0)

 

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