『忘れな草』
赤川次郎/1993年/270ページ
山間の小さな町に住む高校二年の布悠子は、学校からの遺跡掘りの帰りに見知らぬ男を目撃した―。ところが、その日を境に身辺で微妙な異変が起き始め、ゆっくりと迫る何かに怯える布悠子はやがて誰もが信じられなくなり、逃げ場を失ってゆく…。封じ込めたはずの、しかし拭い去れない“過去”が日常を脅す恐怖を新感覚で描く。
(「BOOK」データベースより)
角川ホラー文庫創刊時のラインナップで、著者順で言えば角川ホラー文庫の記念すべき第1作目でもある。
穏やかで平和な田舎町が、とある闖入者によって上っ面をはぎ取られ、人間関係の歪みが露わになっていく…という構成はモダンホラー全盛期のスティーヴン・キングを彷彿とさせるところもある(規模は4分の1くらいだが)。
さすがは赤川次郎、文章はテンポよくサクサク読み進めていけるが、読み終えた次の日には忘れていそうなほどオチが弱い。主人公の女子高生はただただ巻き込まれるだけで、その友人もひたすら悲惨な目に会い、この怪事件のきっかけを作った連中も自滅するという救いの無さだが、もっとネチネチ書こうと思えばできたはず。ライトなエンタメに徹したその姿勢も含め、いろいろな意味で「らしい」立ち位置のトップバッター。それにしても、登場する大人たちがここまで揃いも揃ってロクデナシだと、いっそすがすがしささえ感じる。
★★★(3.0)