角川ホラー文庫全部読む

全部読めるといいですね。おすすめ作品等はリストから

★★★

「6人いる」! 仲間内に紛れ込んだ“やまのめ”が欲望と恐怖を加速させる-『やまのめの六人』

『やまのめの六人』 原浩/2023年/336ページ 嵐の夜、「ある仕事」を終えた男たちを乗せて一台の乗用車が疾走していた。峠に差し掛かった時、土砂崩れに巻き込まれて車は横転。仲間の一人は命を落とし、なんとか生還した五人は、雨をしのごうと付近の屋敷に…

忌まわしき独裁者の複製が、真の英雄に目覚めるまでの物語-『人造救世主 アドルフ・クローン』

『人造救世主 アドルフ・クローン』 小林泰三/2011年/336ページ 謎の組織MESSIAHのもと生み出された超人クローンたちとの死闘を続けるヴォルフ。闘いに巻き込まれてしまった女子大生、ひとみと共に死線をかいくぐり、ついに組織の研究所へと潜入する。だが…

実験動物たちの血で血を洗う死闘! 王道バトルに隠しきれない小林泰三エッセンス-『人造救世主 ギニー・ピッグス』

『人造救世主 ギニー・ピッグス』 小林泰三/2011年/238ページ 歴史上の偉人たちの遺伝子から生み出された、究極の“超人”たち。彼らは少年少女の姿に恐るべき力と残虐性を秘め、謎の組織MESSIAHのもと暗躍を続けていた。偶然彼らの秘密を知った女子大生ひと…

偉人のDNAを持つクローン人間たちの超能力バトルロイヤル! 救世主の座に就くのは果たして…-『人造救世主』

『人造救世主』 小林泰三/2010年/256ページ 女子大生のひとみは、留学生のジーンと共に古都の寺院を訪れていた。そこに西洋風の同じ顔を持つ者たちが突如出現し、建造物を破壊し始め、ひとみ達にも襲いかかる。二人の窮地に現れたのはヴォルフという謎の男…

必読の最恐作・珍怪作も。人の内面の歪みを暴く時代物ホラー集-『こわい本3 狂乱』

『こわい本3 狂乱』 楳図かずお/2021年/384ページ 楳図かずおの恐怖短編時代劇の名作を収録。 江戸時代。美しい娘のいる家に小判がふれば娘は殺される――。たたりの原因を調べる親分は何者かに切られ、娘のひとみが犯人を追ううちに、死体の頭に恐ろしい傷…

誰を・いつ・何故・どうやって呪うのかすらよくわからない、単なるロングヘア幽霊に…-『貞子』

『貞子』 牧野修(著)、鈴木光司(原作)、杉原憲明(脚本)/2019年/304ページ 日本で一、二を争う最新治療が望める総合医療センターで臨床心理士として働く秋川茉優。そこに記憶を失った少女が運び込まれた。茉優の弟の和真は動画配信で伸び悩む再生回数を増や…

死者と生者の距離の近さが新鮮。バラエティに富んだ中国怪談12編-『棺中の妻』

『棺中の妻』 話梅子/2009年/223ページ 許婚の帰りを待ちわびながら病に臥せり不帰の客となってしまった姉のかわりに、自分と駆け落ちして欲しいと迫る妹。戸惑いながら妹を妻とした許婚に、信じられない事件が起こる表題作の他、恋人にだまされ遊里に売ら…

不幸で不幸で不幸にまみれた不幸すぎるヒロインを救うのは、まだ見ぬ我が子と亡き母の呪術…-『ベイビー・セメタリー』

『ベイビー・セメタリー』 和田はつ子/2005年/220ページ 二人の子を持つシングル・マザーの水谷あすかは、中学の同窓生・金原雅人と再会し、彼の子供を身ごもった。だが、大富豪のひとり息子である雅人との結婚は金原家に反対され、子供を堕ろせば、五百万…

後味の悪さと謎の感動がラストで入り混じる大石圭版『ロリータ』-『檻の中の少女』

『檻の中の少女』 大石圭/2008年/381ページ 孤独な画家の「僕」は、モデルの美しい少女と、心を通わせていく。ある日、画商の提案で、少女のヌードを描くことになる。その裸体の美しさに衝撃を受けた僕は、辛うじて欲望を抑える。だが、少女が母親の激しい…

地球滅亡! 異形化した新人類が理性と尊厳を脅かす、楳図印の終末SF-『こわい本2 異形』

『こわい本2 異形』 楳図かずお/2021年/352ページ 天才・楳図かずおの珠玉の恐怖シリーズ『こわい本』。充実の巻末企画付き! 「笑い仮面」では太陽の黒点の異常によって焼け野が原になる地上で生き延びるためにアリのような新人類が誕生する。これは「進化…

超能力犯罪VS探偵事務所。ようやく話が動き始めたところで打ち切りに…-『流星事件2』

『流星事件2』 面出明美/2013年/218ページ 16年前、突如飛来した謎の局地的流星群の影響で、数多の超能力者が日本に誕生。そして現在。表向きは平凡な業務をこなす「海堂探偵事務所」には、強い超能力を持つ若者が集っていた。実は彼等は「メテオ・バース…

心の伏魔殿に鬼が棲む! 魔に魅入られた人々の救いがたき末路-『拝み屋怪談 鬼神の岩戸』

『拝み屋怪談 鬼神の岩戸』 郷内心瞳/2018年/288ページ 都内で起こった幽霊騒動。女性霊能師に解決を要請された現役拝み屋の著者は、自身の過去を見つめざるを得ない状況にすげなく断ってしまう。しかし、現地で現れ続けているという紫色のワンピースを着…

被害者を手厚く葬る「エンゼルケア殺人事件」。矛盾する犯人像をベテラン刑事の勘が暴く!-『バベルの古書 猟奇犯罪プロファイル Book2≪怪物≫』

『バベルの古書 猟奇犯罪プロファイル Book2≪怪物≫』 阿泉来堂/2023年/237ページ 『ナキメサマ』『贋物霊媒師』の著者の新境地。古書を巡る猟奇犯罪を追う! 先のグレゴール・キラー事件から二か月。その功績を認められ、刑事課強行犯係特別事案対策班(通…

ツボを押さえた展開ながら、キャラ造形は昭和な猟奇犯罪モノ-『バベルの古書 猟奇犯罪プロファイル Book1≪変身≫』

『バベルの古書 猟奇犯罪プロファイル Book1≪変身≫』 阿泉来堂/2023年/275ページ 第40回横溝正史ミステリ&ホラー大賞読者賞受賞作家の新境地! 札幌市近郊の町、荏原市で発生した女子大生殺人事件。遺体の首と両手は切断されて持ち去られ、現場にはフランツ…

理不尽が生む孤独が理不尽な惨劇を起こす…。それにしてもこの霊能者はヒドいな!-『呪怨 黒い少女』

『呪怨 黒い少女』 大石圭/2009年/157ページ 看護師の裕子は、芙季絵という少女の担当を任されてから、奇妙な体験をするようになる。そして検査の結果、芙季絵の体内に「腫瘍」が発見される…。生まれてくることのできなかった者の怨みが少女を蝕み、やがて…

陰惨すぎて逆に心地よい「バスケババア」誕生秘話-『呪怨 白い老女』

『呪怨 白い老女』 大石圭/2009年/179ページ ある家で、司法試験に落ちた息子が家族5人を次々と惨殺し、自らも首を吊って死んだ。死ぬ瞬間を彼が録音したカセットテープには、彼の声とともに少女の不気味な声が録音されていた。それは、あかねが小学生の頃…

サイコと呼ぶのも生ぬるい、ド直球のイカレ教師が殺人授業で大活躍-『先生』

『先生』 吉村達也/1995年/350ページ 雪のように白い肌と鋭い目、びっしり生やした髭面―それが総美学園中等部三年A組の担任として赴任してきた北薗雪夫先生だった。だがその先生には、五人の中学生を次々と殺した驚愕の過去があった。幼い頃、色の白さから…

世界に広がる憎悪の輪! 伽椰子のパワフルさを久々堪能できる好編-『呪怨 パンデミック』

『呪怨 パンデミック』 大石圭/2007年/332ページ 住宅街の一角にひっそりと建つ幽霊屋敷として有名な「ある家」。その家に足を踏み入れた者たちは次々と謎の死や失踪を遂げていた。そこではかつて伽椰子という女性が夫に惨殺され、当時6歳だった長男の俊雄…

ドラキュラ、青髭、ラスプーチン…欲望に生きた歴史人物10人の妖しく美しく血に塗れた生涯!-『きれいなお城の怖い話』

『きれいなお城の怖い話』 桐生操/1998年/239ページ 狂気、殺人、拷問、毒薬、悪魔、サディスト…きれいなお城には、恐怖がいっぱい。みずからの欲望と快楽のはてに、血塗られた歴史を作り上げた十人の悪女・怪人の姿を、浮き彫りにする。600人の娘を殺した…

Jホラー界で二番目くらいに有名なパワフル呪殺ヒロイン・伽椰子の誕生を描く秀逸ノベライズ-『呪怨』

『呪怨』 大石圭/2003年/314ページ 老人介護のボランティアをしている仁科理佳は、寝たきりの老婆・幸枝の様子を見てきて欲しいと頼まれる。郊外の住宅地にあるその家の中は、悪臭が漂い、ゴミが散乱していた。理佳が人の気配を感じて二階に上がるとガムテ…

ファンタジー・オカルトホラー・サイコサスペンス・SF・ヒューマンドラマを闇鍋にした吉村印の珍メニュー-『そのカメラで撮らないで』

『そのカメラで撮らないで』 吉村達也/2018年/288ページ 「私には、なぜ人の不幸な未来が見えてしまうの?」これ以上考えられないほど最悪の誕生日を迎え、悲しみのどん庭にいた仁美。なんとか立ち直り、カメラマンとして働き始めた矢先、異常な事態に遭遇…

最凶怪談「八甲田山」にまつわるエピソードは興味深いが全体的にはややパンチ不足-『怪談狩り 葬儀猫』

『怪談狩り 葬儀猫』 中山市朗/2023年/256ページ 怪異蒐集家が厳選して語り継ぐ、本当に怖い怪談実話集。 コロナ禍の町で、異様な格好の男を目撃した主婦の体験が不思議な「面布」。引っ越したばかりの地で、近所で立て続けに起きた不幸と、その共通点に震…

幼い息子を亡くした一家が、幽霊トンネルで遭遇する悪夢。絶望・希望が混在するラストが秀逸-『ダムド・ファイル 「あのトンネル」』

『ダムド・ファイル 「あのトンネル」』 原案:井川耕一郎、万田邦敏 著:斉木晴子/2004年/216ページ その日、カーナビが示したのは、愛知県北東部の山中にある「伊勢神トンネル」。だが、実際に目の前に現れたのは「伊世賀美」と書かれた古びたトンネルだっ…

グロテスク特化と思いきや、幽霊・ロボット・宇宙人・妖怪も入り乱れる百花繚乱のフリークショー!-『臓物大展覧会』

『臓物大展覧会』 小林泰三/2009年/384ページ 彷徨い人が、うらぶれた町で見つけた「臓物大展覧会」という看板。興味本位で中に入ると、そこには数百もある肉らしき塊が…。彷徨い人が関係者らしき人物に訊いてみると、展示されている臓物は一つ一つ己の物…

過剰なまでのサービス精神に溢れた、格調高くもB級な異形長編-『くらら 怪物船團』

『くらら 怪物船團』 井上雅彦/1998年/328ページ 原因不明の事故で沈没したクルーザーには、恋人が乗っていた。未確認の情報を元に、結城が駆けつけた港町には、異様な現象が起こりつつあった。曲馬団の箱、獣の檻、朽ち果てた道化人形…。奇妙な漂着物を拾…

大都会の真ん中で、人足途絶えた山奥で…。ひっそりと佇む死した物件を巡る廃墟フォトエッセイ-『廃墟霊の記憶』

『廃墟霊の記憶』 文:板橋雅弘、写真:岩切等/2002年/190ページ 幽霊ホテルという名と日本初のダイナマイト爆破で90年代に一躍その名を馳せた琵琶湖畔の木の岡レイクサイドホテル。30年以上運行されていない横浜のドリームモノレールなど、一度見たら決し…

文通相手からの返信が日常を脅かす。解説文のネタバレは読まないことをオススメ-『文通』

『文通』 吉村達也/1994年/319ページ 16歳の女子高生片桐瑞穂は風変わりな雑誌を本屋で見つけた。『月刊ペンパル』――それは、文通マニアの専門誌だった。気まぐれに出した瑞穂の伝言に応じてきたのは4人の男女。だが、筆跡も住所も異なる彼らの手紙はどこ…

厨二妄想の少女が実体化! 実話怪談の域を超えた「拝み屋怪談」としか言い表せない一編-『拝み屋怪談 来たるべき災禍』

『拝み屋怪談 来たるべき災禍』 郷内心瞳/2017年/352ページ 虚実の境が見えなくなってしまった時、人にとってあらゆるものが、怪異となり得る危険を孕んでしまう―。現役拝み屋が体験した現世のこととも悪夢とも知れない恐るべき怪異。すべては20年以上前、…

小さな不満とすれ違いがルームシェア生活を崩壊に導く。終盤のホラー展開はやや唐突?-『同居人』

『同居人』 新津きよみ/2003年/253ページ 35歳、デザイナーの麻由美は都内に新築マンションを3800万円で購入する。ローンの繰り上げ返済のためにルームメイトを募り、添乗員・乃理子との同居生活がスタートした。しかし、お互いに「秘密」を抱えているため…

運命を狂わせる女との出会い。いじましく心弱き男たちの儚い夢を描く-『合意情死』

『合意情死(がふいしんぢゆう)』 岩井志麻子/2005年/202ページ 「熊」とあだ名される、いかつい容貌と体格の巡査。見かけによらず心優しく気弱な彼が、気の強い女房の目を盗んで、つかの間、抱いた夢の顛末とは―(「巡行線路」)。小学校教員、新聞記者、地…