角川ホラー文庫全部読む

全部読めるといいですね。おすすめ作品等はリストから

女性を地下室で拉致・監禁・凌辱するコレクターの日常。ああっ…-『飼育する男』

『飼育する男』 大石圭/2006年/320ページ 昔、昔…。春のある午後、少年は森の中で、日にさらされて色褪せた雑誌が落ちているのを見つけた。何げなくページを開いた瞬間、若い女性の全裸写真が視界に飛び込んで来て、思わず息を飲んだ。少年はまだ7歳か8歳…

不穏な理由でお蔵入りになった番組を追うフェイクドキュメンタリー。テレビ版の補完としても秀逸-『放送禁止』

『放送禁止』 長江俊和/2016年/200ページ 事実を積み重ねることが、必ずしも真実に結びつくとは限らない。何らかの理由で放送を見送られ、テープ倉庫の片隅に眠り続ける“お蔵入り”テープ。そこには、永遠に伝えることのできない、もう一つの“真実”が隠され…

怪談を語る者としての矜持が垣間見える、エッセイとしても上質な1冊-『船玉さま 怪談を書く怪談』

『船玉さま 怪談を書く怪談』 加門七海/2022年/288ページ 海が怖い。海は死に近いからーー。山では、「この先に行ったら、私は死ぬ」というような直感で足がすくんだこともある。海は、実際恐ろしい目にあったことがないのだけれど、怖い。ある日、友人が…

平穏なき魂vs霊媒師、満足死の自由がある町…。静謐さがリアリティを生む傑作2編-『白い部屋で月の歌を』

『白い部屋で月の歌を』 朱川湊人/2003年/304ページ ジュンは霊能力者シシィのもとで除霊のアシスタントをしている。仕事は霊魂を体内に受け入れること。彼にとっては霊たちが自分の内側の白い部屋に入ってくるように見えているのだ。ある日、殺傷沙汰のシ…

自殺志願者を救うネットのカリスマの正体は? 安定のシリーズ第3作-『AID 猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子』

『AID 猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子』 内藤了/2015年/383ページ 都内の霊園で、腐乱自殺死体が爆発するという事件が起こる。ネットにアップされていた死体の動画には、なぜか「周期ゼミ」というタイトルが付けられていた。それを皮切りに続々と発生する異常…

血肉と腐臭にまみれた家族の団結。ラストのぐちゃぬる決戦の高揚感が凄い!-『血の配達屋さん』

『血の配達屋さん』 北見崇史/2022年/336ページ 家出した母を連れ戻すため、大学生の私は北国の港町・独鈷路戸にやって来た。赤錆に覆われ、動物の死骸が打ち捨てられた町は荒涼としている。あてもなく歩くうち、丘の上の廃墟で母と老人たちが凄まじい腐臭…

ファンタジー風ほのぼの怪奇譚だが、時おり仄暗いものを覗かせる。「戦慄の湯けむり旅情」って何だよ!-『厄落とし』

『厄落とし』 瀬川ことび/2000年/179ページ その夜、年明けの挨拶回りにつきあわされ、くたびれ果てて帰宅した恭子を待っていたのは、高校時代のクラスメイト、恵からの電話だった。「お正月早々に墓掘りすることになったんよ」―。表題作「厄落とし」をは…

平均点の高い実話怪談集だが、コンセプト的に恐怖度は薄れがちか-『全国怪談 オトリヨセ 恐怖大物産展』

『全国怪談 オトリヨセ 恐怖大物産展』 黒木あるじ/2015年/240ページ 怪談とは、その土地が持つ記憶の断片なのかもしれない―。北海道のトンネル内で友人が叫んだ言葉の意味。福井県沿岸に浮かぶ島の神社へ不埒な目的で立ち入ったカップルの末路。滋賀県の…

大失敗映画をつまらなさも含めて忠実にノベライズ。何をどう怖がればいいのやら-『劇場霊』

『劇場霊』 脚本:加藤淳也・三宅隆太、ノベライズ:堀江純子/2015年/177ページ 気鋭の演出家・錦野の新作舞台は、若さを保つため少女の生き血を浴びたという実在した女貴族エリザベートの生涯。舞台にはその内面を映し出す分身として人形が用意されるが、…

各都道府県のご当地怪談、47編お取り寄せ。怖さとご当地性は玉石混交ながら充実の1冊-『全国怪談 オトリヨセ』

『全国怪談 オトリヨセ』 黒木あるじ/2014年/219ページ 北は北海道から、南は沖縄まで。日本全国の都道府県から蒐集した47のご当地怪談実話を収録。岩手の民宿、宮城の港町、群馬の史跡、山梨の樹海、愛知の橋、福井の沖合、滋賀の湖、京都のトンネル、鳥…

消せない過去を届けに来る郵便屋。ラストの鬼気迫る展開は見ものだが、全体的にはごく平凡な因縁話-『郵便屋』

『郵便屋』 芹澤準/1994年/238ページ 結婚をひかえ、平凡な幸福を満喫していた萩尾和人の前に、ある日突然現れた不吉な影―今日もまたあの郵便屋が、忘れていた忌しい過去を配達にやってくる。住所も宛名もない不気味な封筒を、古ぼけた配達鞄にしのばせて……

作者と読者と角川書店をも巻き込み降り注ぐ、心湿らす永遠の雨。思春期ミステリの大怪作-『X雨』

『X雨』 沙藤一樹/2000年/335ページ 一月のある快晴の朝、小学生の里緒の前に一人の少年が現れた。何故かレインコートを着ていた少年はフードをとり、潰れた右目をあらわらにすると、自分には見えるという、“X雨”のことを話しはじめた―。15年後、作家にな…

食べ物の恨みは恐ろしいというアレ。軽めながらもスパイスの利いた“食”にまつわるホラー8品-『意地悪な食卓』

『意地悪な食卓』 新津きよみ/2013年/240ページ 老人福祉施設のデイサービスセンターに勤める純子は偶然、一生忘れようとしても忘れられない女性の担当になった。かつて、純子が小学生の頃、食べきれない給食を無理やり食べさせようとした女の―(『給食』)…

ひだりをタブー視する町の血塗られた歴史。町がクソ過ぎるせいで大惨事に思わず喝采!-『ひだり』

『ひだり』 倉阪鬼一郎/2009年/313ページ 比陀理神社では、巫女のアルバイトをしていた短大生が怪死し、ジョギング中の男が突然死する事件が相次いだ。この神社には、「鳥居は必ず右足からまたぐべし」という掟があったのだ。比陀理中学に転校してきた言美…