角川ホラー文庫全部読む

全部読めるといいですね。おすすめ作品等はリストから

ボーダーを越えて来たる死者が生者を惑わす。ラスト以外は秀逸なホラーミステリ-『フランティック』

『フランティック』 鎌田敏夫/2001年/286ページ 「私は母に殺されたの」ミステリー作家の丹野は妻・怜子から奇妙な事を言われる。死ぬ間際に育ての親が怜子に言い残したという謎の言葉の意味を探るうちに33年前のバス事故にたどりつく。触れてはいけない過…

豪華メンバーながら寄せ集め感が強いアンソロジー。栗本薫は掘り出し物-『悪夢』

『悪夢』 夢枕獏、栗本薫、赤川次郎、竹河聖/1995年/212ページ 夢か現実か。現実の世界に非日常が入りこむ時、そこには無限の闇が…。四人の作家による、四つの恐怖。豪華メンバーで贈る、ファンには絶対見逃せないホラー・アンソロジー。 (「BOOK」データベ…

「シリーズものは巻数を重ねるごとに質が落ちる」と作者がボヤき始める第3弾-『忌談3』

『忌談3』 福澤徹三/2014年/208ページ 社内で起きた盗難事件、深夜に現場を撮影したビデオは封印された(「持ち禁」)。売れないキャバ嬢を大金でホテルに誘った客の正体は?(「実験」)。なぜかからみを厭がるAV女優、監督は撮影を強行したが…(「雨女」)。サ…

奇作ぞろいの曲者作家がラノベを書くと、何故か週刊少年チャンピオンの雰囲気に-『戦争大臣 I 嘲笑する虐殺者』

『戦争大臣 I 嘲笑する虐殺者(ニーズヘッグ)』 遠藤徹/2011年/331ページ 地球儀から消された国は、世界に宣戦布国する。致死性ウイルスが死の嵐を招いた世界。国家Jは患者の隔離所にされるが、憎悪を糧に生き延びた。ウイルスを克服した英雄は戦争大臣を…

SF界の重鎮はホラーにおいてもレジェンド級。外れの無い15編-『霧が晴れた時』

『霧が晴れた時 自選恐怖小説集』 小松左京/1993年/432ページ 太平洋戦争末期、阪神間大空襲で焼け出された少年が、世話になったお屋敷で見た恐怖の真相とは…。名作中の名作「くだんのはは」をはじめ、日本恐怖小説界に今なお絶大なる影響を与えつづけてい…

エグさとエモさが限界値、魔法少女もの最狂にして最高の変異亜種-『魔女の子供はやってこない』

『魔女の子供はやってこない』 矢部嵩/2013年/336ページ 小学生の夏子はある日「六〇六号室まで届けてください。お礼します。魔女」と書かれたへんてこなステッキを拾う。半信半疑で友達5人と部屋を訪ねるが、調子外れな魔女の暴走と勘違いで、あっさり2人…

不幸と犯罪が連鎖するクソ物件の恐怖。売れなさ過ぎて荒廃した団地で起こる悲劇!-『ホーム アウェイ』

『ホーム アウェイ』 森村誠一/2006年/201ページ 都心から離れた郊外で、念願のマイホームを手に入れた鶴川一家。初めは豊かな自然に囲まれ満足していたが、すぐに何かがおかしいことに気づく。ごみの収集がこない。テレビも映らない。バスも通っていない…

手塚治虫のホラー漫画なんて大量にあるんだし、もうちょいコンセプトを絞れなかったものか-『人面瘡』

『人面瘡 ~手塚治虫怪奇アンソロジー~』 手塚治虫/1998年/362ページ 心の奥底に潜む黒い欲望故に、二重人格となった殺人鬼。その顔のできものにブラック・ジャックの奇跡のメスが入る「人面瘡」、自然破壊による大地の怒り「白縫」、ささやかな幸せを求…

角川ホラー文庫1、2を争う奇書。異常な文章で綴られる死体ゴロゴロの学生生活-『保健室登校』

『保健室登校』 矢部嵩/2009年/302ページ とある中学校に転入した少女。新しい級友たちは皆、間近に迫るクラス旅行に夢中で転入生には見向きもしない。女子グループが彼女も旅行に誘おうとすると、断固反対する者が現れて、クラスを二分する大議論に発展。…

オーソドックス、かつバラエティに富んだ手堅い実話怪談集。やや手堅過ぎか?-『S霊園 怪談実話集』

『S霊園 怪談実話集』 福澤徹三/2019年/192ページ 教師が命を絶つ前に黒板に書いた記号が蘇る「先生踏切」、廃屋で見つけた謎の木箱が恐怖をもたらす「あにもの」、ある滝にまつわる怪談実話が時を経てシンクロする「滝の帰りに」、通夜の会食のあと記憶が…

過去への想い、過去からの想いに縄縛される恐怖。傑作揃いの稀有なオリジナルアンソロジー-『かなわぬ想い』

『かなわぬ想い―惨劇で祝う五つの記念日』 今邑彩、小池真理子、篠田節子、服部まゆみ、坂東眞砂子/1994年/292ページ 今邑 彩・小池真理子・篠田節子・服部まゆみ・坂東眞砂子あの日を境に、私の運命の歯車は、ずるずると狂い始めてしまった…!! 記念日をテ…

執拗なまでに活き活きと描かれる、アンモラルでリアルな小学生の日常。考え得る中で最悪のラスト!-『夏の滴』

『夏の滴』 桐生祐狩/2003年/389ページ 僕は藤山真介。徳田と河合、そして転校していった友達は、本が好きという共通項で寄り集まった仲だったのだ―。町おこしイベントの失敗がもとで転校を余儀なくされる同級生、横行するいじめ、クラス中が熱狂しだした…

記憶術と深層プロファイリングで人体切り取り魔の正体を暴け!-『CUT 猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子』

『CUT 猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子』 内藤了/2015年/400ページ 廃屋で見つかった5人の女性の死体。そのどれもが身体の一部を切り取られ、激しく損壊していた。被害者の身元を調べた八王子西署の藤堂比奈子は、彼女たちが若くて色白でストーカーに悩んでいた…

凪の如き静かなホラー短編集。地味ながら予測不能の不穏さが印象的-『アイズ』

『アイズ』 鈴木光司/2015年/299ページ 世の中にはまだ科学では説明できない現象が存在する―旧友との再会で呼び覚まされる、過去の悪夢(「鍵穴」)。ホテルの窓辺にあられもない姿でくくられた美女(「クライ・アイズ」)。マンションの表札に残される不気味…