角川ホラー文庫全部読む

全部読めるといいですね。おすすめ作品等はリストから

手塚治虫のホラー漫画なんて大量にあるんだし、もうちょいコンセプトを絞れなかったものか-『人面瘡』

『人面瘡 ~手塚治虫怪奇アンソロジー~』 手塚治虫/1998年/362ページ 心の奥底に潜む黒い欲望故に、二重人格となった殺人鬼。その顔のできものにブラック・ジャックの奇跡のメスが入る「人面瘡」、自然破壊による大地の怒り「白縫」、ささやかな幸せを求…

角川ホラー文庫1、2を争う奇書。異常な文章で綴られる死体ゴロゴロの学生生活-『保健室登校』

『保健室登校』 矢部嵩/2009年/302ページ とある中学校に転入した少女。新しい級友たちは皆、間近に迫るクラス旅行に夢中で転入生には見向きもしない。女子グループが彼女も旅行に誘おうとすると、断固反対する者が現れて、クラスを二分する大議論に発展。…

オーソドックス、かつバラエティに富んだ手堅い実話怪談集。やや手堅過ぎか?-『S霊園 怪談実話集』

『S霊園 怪談実話集』 福澤徹三/2019年/192ページ 教師が命を絶つ前に黒板に書いた記号が蘇る「先生踏切」、廃屋で見つけた謎の木箱が恐怖をもたらす「あにもの」、ある滝にまつわる怪談実話が時を経てシンクロする「滝の帰りに」、通夜の会食のあと記憶が…

過去への想い、過去からの想いに縄縛される恐怖。傑作揃いの稀有なオリジナルアンソロジー-『かなわぬ想い』

『かなわぬ想い―惨劇で祝う五つの記念日』 今邑彩、小池真理子、篠田節子、服部まゆみ、坂東眞砂子/1994年/292ページ 今邑 彩・小池真理子・篠田節子・服部まゆみ・坂東眞砂子あの日を境に、私の運命の歯車は、ずるずると狂い始めてしまった…!! 記念日をテ…

執拗なまでに活き活きと描かれる、アンモラルでリアルな小学生の日常。考え得る中で最悪のラスト!-『夏の滴』

『夏の滴』 桐生祐狩/2003年/389ページ 僕は藤山真介。徳田と河合、そして転校していった友達は、本が好きという共通項で寄り集まった仲だったのだ―。町おこしイベントの失敗がもとで転校を余儀なくされる同級生、横行するいじめ、クラス中が熱狂しだした…

記憶術と深層プロファイリングで人体切り取り魔の正体を暴け!-『CUT 猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子』

『CUT 猟奇犯罪捜査班・藤堂比奈子』 内藤了/2015年/400ページ 廃屋で見つかった5人の女性の死体。そのどれもが身体の一部を切り取られ、激しく損壊していた。被害者の身元を調べた八王子西署の藤堂比奈子は、彼女たちが若くて色白でストーカーに悩んでいた…

凪の如き静かなホラー短編集。地味ながら予測不能の不穏さが印象的-『アイズ』

『アイズ』 鈴木光司/2015年/299ページ 世の中にはまだ科学では説明できない現象が存在する―旧友との再会で呼び覚まされる、過去の悪夢(「鍵穴」)。ホテルの窓辺にあられもない姿でくくられた美女(「クライ・アイズ」)。マンションの表札に残される不気味…

明らかに人が殺されている親戚の家で暮らす、シュールで悪夢な夏休み-『紗央里ちゃんの家』

『紗央里ちゃんの家』 矢部嵩/2008年/176ページ 叔母からの突然の電話で、祖母が風邪をこじらせて死んだと聞かされた。小学5年生の僕と父親を家に招き入れた叔母の腕は真っ赤に染まり、祖母のことも、急にいなくなったという従姉の紗央里ちゃんのことも、…

夏の怪談より他の季節の方が怖い。意外にエゲつない話多めの怪談歳時記-『怪談狩り 四季異聞録』

『怪談狩り 四季異聞録』 中山市朗/2017年/320ページ 「怖い怪談は、夏だけのものではない」と断言する怪異蒐集家・中山市朗が、四季折々の行事や情景を織り交ぜながら綴る怪談集。毎年3月3日の朝に天井からバサリと落ちてくる異様なモノ、真夏のキャンプ…

なんちゃって帝都を舞台に、美男美女とからくりメイドが魔物退治。記者ならちゃんと取材して!-『帝都月光伝 Memory of the Clock』

『帝都月光伝 Memory of the Clock』 司月透/2011年/278ページ 魑魅魍魎の跋扈する帝都・東京。自ら命を絶った男が死後、幽鬼となって、横恋慕した女のもとを夜な夜な訪れ、ついには何処かへ攫ってゆく―…らしい。そんな謎の「神隠し事件」を追う弱小出版社…

「一番怖いのは人間」パターンを実話怪談でやってしまった焦土作戦。新境地には違いない-『忌談2』

『忌談2』 福澤徹三/2014年/191ページ 夜な夜なマンションの上の部屋から聞こえる電車の音の正体は(「電車の音」)。就活に悩む女子大生が遭遇した恐怖の体験(「最終面接」)。新米ホストが店からあてがわれた寮の部屋は、なぜか2DKだった(「過去のある部屋…

楽しく学べる殺人世界史。いわゆる「シリアルキラー」は少なめだが満足度高し-『美しき殺人鬼の本』

『美しき殺人鬼の本』 桐生操/1995年/267ページ 猟奇殺人鬼、大量殺人鬼、人肉供食鬼、毒殺鬼や女独裁者など、自らの衝動のおもむくままに残忍な殺戮をくりひろげた殺人鬼たち。その手口のあまりのすさまじさ、むごたらしさに、あなたはきっと目を離せなく…

正しく中二病な残酷寓話。あまりにストレート過ぎる怒りがスれた大人の胸を打つ-『D-ブリッジ・テープ』

『D-ブリッジ・テープ』 沙藤一樹/1998年/167ページ 近未来の横浜ベイブリッジは数多のゴミに溢れていた。その中から発見された少年の死体と一本のカセットテープ。そこには恐るべき内容が…斬新な表現手法と尖った感性が新たな地平を拓く野心的快作。第4回…

グロテスクで懐かしい奇妙な町。SFとユーモアと怪獣に満ちた傑作-『人面町四丁目』

『人面町四丁目』 北野勇作/2004年/245ページ 大災害に被災し、行き場を失った男が遺体安置所で出会った不思議な女――。いっしょに来る? その言葉に導かれ、女の故郷人面町で、いつしかともに暮らし始めた男が出会うこの世のものとは思えぬ異形のものたち…